第七回特別インタビュー Mega Shinnosuke (ミュージシャン)

この自粛期間でやっと「映画を見ている」と言えるくらいに

――この自粛期間はどんなことをして過ごしているんですか?

Mega Shinnosuke(以下、Mega):最近は、曲をちょっとずつ作りながら…、ゲームしたり、あと、がんばってNetflixを見てますね。普段あんまり映画は見ないんですけど、こういうときなので見なきゃいけないかなって。本も頑張って読もうかなと思ってます。普段はやらないけど、みんながやっているような娯楽を1つでも2つでも自分のものにすれば、生活が豊かになるかなと思って。あとは部屋の模様替えをしていて、そのせいで今、部屋がすごく汚いです(笑)。

――Netflixはどんなものを?

Mega:いろいろ見てるんですけど、すぐ見るのをやめちゃうものも多いです。いつもコンビニでごはんを買ってきて、食べると同時に再生するんですけど、つまらないともう続かない。面白かったので言うと、『ストレンジャー・シングス』は最近やっとシーズン3まで見終わりました。特にシーズン3は色彩がカラフルだったのもよくて、面白かったですね。あと好きなのは『メン・イン・ブラック』。『2』だけなぜかNetflixになかったけど、スマホを買った時についてきたAmazonプライムの無料期間を使って見て、『3』まで見終わりました。ミーハーなのでポスターを部屋に貼りました(笑)。今まで映画を全く見てこなかったので、最近やっと「映画を見てます」と言ってもいいかもなっていう感じです。あとは『シング・ストリート 未来へのうた』。あれはめちゃくちゃ好きでした。最近、自分がどういうものが好きなのかを分析してみたんですけど、色彩がきれいな映画だなって。例えば『シャイニング』とか。僕、ホラーは苦手なのでちゃんと見れないんですけど、色彩とか美術とかが芸術的だったので最後まで見れました。でも、映画で1番好きなジャンルはSFです。どうしてかな…ビジュアル的に刺激を受けるのかも知れないし、CGが面白いのかも知れない。

――今まで見たこともないものを見られる、みたいな感じでしょうか?

Mega:たぶんそうだと思います。それに『ドラえもん』的な、こういうのがあったらいいな、っていう道具が出てくるのが面白いのかも知れないですね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のホバーボードもそうだし、『メン・イン・ブラック』だったら記憶を消せる装置(ニューラライザー)だったりとか。物語の中で、その世界の人々の生活に馴染んでるんですよね。そう考えると、SFが受け入れやすいのは、小さい頃に『ドラえもん』をよく見てたからその影響かもしれないです。

――TVなんかでも映画にはあまり触れてこなかったんでしょうか?

Mega:子供の頃『ONE PIECE』を見てた記憶はありますけど、ジブリも『となりのトトロ』くらいで、他は全然見たことないし。よくジブリのモノマネをする人っているじゃないですか。全然わからないんですよ。だから友だちがジブリの話とかしてると輪に入れないです。

小学生の時は校庭開放で、みんなでボール遊びをした

――小さい頃はどんなものが好きだったんですか?

Mega:なにかにすごくハマったという記憶は全然ないです。今までの人生において、基本的にハマってきたものって少ない方だと思うんですよね。『ポケモン』とか『イナズマイレブン』を見て、DSでゲームをしてたくらいしか記憶にないですね。小学校の時なんかは、休日に校庭が開放されていたから、みんなでボール遊びをした記憶はありますけど、皆で遊ぶっていう事にハマっていたとかとも少し違うしな……。

――最初に興味を持ったのが音楽だったんですか?

Mega:最初は音楽ではなくて洋服なんです。アートというか、芸術への入口が洋服でした。小学6年生の時に、ちょっとおしゃれをしたいなと言う気持ちが芽生えて、ベルトをして。小学生ってベルトしているだけでからかわれるんですよ(笑)。でも、今でもそのベルトは大事に使ってます。小学6年生の時にUNIQLOで買ったやつが今はヴィンテージものみたいになって(笑)。今でも洋服はずっと好きです。僕は実家が福岡なんですけど、高校1年生で古着にハマって、大名という古着屋がたくさん並んでいる地域に通って、店員さんと話をしたり、たまに洋服を買ったりして過ごしていました。

――ファッションにハマるきっかけは何だったんですか?

Mega:はっきり覚えてないんですけど、もしかしたら、ユーチューバーかも知れないです。中学生の時にYouTubeが好きでたくさん見ていて、圧倒的にユーチューバーの方が面白かった。ファッションにしても髪型にしても、髪の色だって何でもあり。そこで“カジュアル”というものの捉え方の幅が大きく広がったのかも知れないです。

――Macbookを買ってもらったきっかけは?

Mega:ユーチューバーを見ていて、動画編集をしてみたくなって。動画を見てMacbookをみんなが使っているというのは知っていたので、お母さんに「買ってほしい!」って頼んだんです。そうしたら、勉強の為にカナダにホームステイするなら買ってあげると言われて。海外は行きたくなかったけど頑張って短期留学して、それで手に入れました。

――そうなんですね(笑)Macbookはすぐに使いこなせました?

Mega:全然分からなかったし、いまだにパソコンは強くないです。曲作りも、デモとか、そういうものができるくらいで、パソコンをものすごく使いこなせているというわけではないと思います。MacbookにはGarageBandという音楽ソフトが最初から入っていて、ギターとアンプのアイコンだったからかな…。とにかく初めてでもわかりやすかった。Apple製品ってビジュアルでどんなソフトなのかがわかるんですよね。YouTubeのサムネイルにしたって、これはどんな動画なのか、何が見れるコンテンツなのかっていうのがわかりやすい。

高校2年生で本格的に音楽を聞きはじめ、曲も作りはじめた

――いろんなところでお話しされてると思いますが、改めて、音楽活動を始めたのはいつ頃からですか。

Mega:音楽にハマったという時期で言えば、高校2年生の秋です。その前の夏に、文化祭でやるコピーバンドの人数合わせの為にバンドに誘われて、初めて音楽スタジオに入って。いわゆる「音楽を始めました」という人が最初にやることをやったんですよね。それでコピーバンド界隈がつながっていって、コピーをしているいろんな人と知り合ったんですけど、ライブもどれも、“誰かのコピーをやる”というのが面白くないなと感じて。作曲がやりたい、オリジナルをやりたいって秋頃には思い始めていました。友だちが「曲作るなら、Spotifyは入った方がいい、音楽が聞き放題だから」って教えてくれて試しにSpotifyに入ったんです。そこでやっと音楽をちゃんと聞くようになりました。洋楽はSpotifyに入ってなかったら一生聞いてなかったと思います。

――それほど洋楽とは接点がなかった?

Mega:全くないです。気持ち悪いって感じてましたもん。洋楽のこと(笑)。中高生の時って、洋楽派と邦楽派で派閥争いが起きるんですよね。結局派閥って言っても、CMで流れる洋楽と、CMで流れる邦楽くらいしか聞いてなくて、今の僕からしたら、誰も音楽なんて聞いちゃいなかったって感じなんですけど。僕が参加したコピーバンドも、例えばTHE STROKESとかをやっていたらかっこいい!と思ってたかも知れないけど、誰でも知ってる王道な曲をやってるだけだったから。王道のコピーにハマれなかった、というのはオリジナルをやりたくなったきっかけの1つかもしれないですね。

――それで、高校2年生の時に、オリジナル曲をやるバンドを始めるんですね。

Mega:当時はソロ活動をするときに、演奏者を呼んで弾いてもらう、なんてことができると思わなかったので、「とりあえず曲書いてるから、この曲を演奏してほしい」という体でバンドを組みました。やってることは今と何ら変わりないですね。作った曲を演奏してもらって、僕が歌っているという。

――作曲のアイデアはどういうところから出てくるんですか?

Mega:最初の頃は、全然音楽を聞いてない時期に作りはじめてるんです。例えば初めて作った曲の「blue men.」とか「O.W.A.」は何もないところから作りました。Logicという音楽ソフトにDrummerという機能があって、ビートを勝手に鳴らしてくれるんです。そこにギターを乗せて、歌を乗せて、という感じで簡単に作っていくんです。今でも流れは同じです。例えば「こんな感じの曲」っていう感じのリファレンス(参考曲)があっても、全然その通りにはなっていかないから。作業をしながら、いいと感じるものを繋げて作っていく感じです。
高校生の頃から聞いてきたいろんな曲だとか、映画で流れる音楽だとか、馴染みの古着屋でかかっていた曲だとかが、今の僕の引き出しになっていて、「こういうシーンでこんな曲がかかってたらいいな」というイメージを元にして、いろんな引き出しを使ってブラッシュアップしていってます。

無駄なことはやりたくない

――東京に出てきて1年。地元福岡にいた頃から環境は大きく変わったと思いますが、どんな1年でしたか?

Mega:そうですね、自分の環境以上に、学生生活からアーティスト活動への変化が大きすぎて、上京した環境の変化がどれだけあるのか全くわからないんです。強いていうなら、福岡では狭い範囲にほとんどの友だちがいたから、自転車で会いに行けたんですけど、東京は電車じゃないと会えない距離の人が多くて、そこが不便かな……。ワーッと集まる感じになりにくいですよね。でも正直そのくらいかなぁ。

――“アーティストになる”ということに迷いはなかったんですか?学生を続けるだとか、就職をするだとか、他の選択肢は全く考えなかった?

Mega:僕、もともと音楽の専門学校に行きたいと思っていて、それで東京に出てこようと思ってたんです。受験も合格して、入学前の顔合わせにも行ったんです。そこで教えてくれる先生と生徒たちで初めて会って。その時に、僕にとってはきっと意味の無い時間を過ごしてしまうかも、と思ったので専門学校に行くのは辞退しました。キャンセル料を10万円支払って(笑)。それで結果的にアーティストになったという流れです。学校で無駄な時間を過ごすより、アーティストになる方がよっぽどマシだって当時は思っていました。

――それで実際、今はまさに業界の最前線で活躍しているような方々と一緒に曲を作ったりする。受ける刺激は想像以上だったのではないですか?

Mega:特に想像してなかったんですけど、無駄なことをしていると感じることは全くないです。そもそも学生には文化祭とかがあるんですよ。絶対無駄だろ!って僕はずっと思っていて。文化祭やるくらいだったらMV撮ってた方が絶対いいですもん。今は文化祭がないだけで充分得だし、巡り合う人たちも面白い人ばっかりだし。

――文化祭を必死にやっていた側なので、衝撃を受けています(笑)。

Mega:あはは(笑)いや、もちろんそれも全然ありだと思いますよ!

――今まで付き合ってきた人たちとは周囲の世代も変わってきたのかなと思うのですが、年齢が上の人たちってけっこう増えましたか?

Mega:僕、福岡にいた時から年上の友だちはめちゃくちゃ多かったんです。同じ年の友だちももちろんですけど、高校2年生から3年生に上がるくらいの時期に「学校辞めます」って言って全然学校に行かなくなってから、年上の友だちがたくさんできた。今、福岡に帰って会う友だちは1つとか2つ上、6つ上の人とかもいるし。福岡にいる頃に1番遊んでいたのも35歳のおじさんでした(笑)。ピザを食べながら「ウイニングイレブン」(サッカーゲーム)をして遊んでました。すごくアートな感じの変わったおじさんで。

――Megaさんにとって35歳はおじさんですよね…(笑)。どんなことをしてる方だったんですか?

Mega:すごくわかりにくい場所でTシャツ屋さんをやっている方で。だから暇みたいで(笑)。僕はたまに遊びにいったり、携帯の充電が切れそうになるとお店に行って充電させてもらったり。そんな感じで街をウロウロしていたので、年上の友だちがどんどん増えていきました。それが結果的には刺激にもなりました。

自分の正しいと思うこと、やりたいことを押し通すこと一番大事

――今、ここだけは他に負けない、というものはどういうところにあると感じていますか。

Mega:うーん…、1年くらい前までは、ここがいいとか悪いとか結構考えてたんですけど、今は勝ち負けじゃないな、ということをすごく考えていて。僕が自分らしく生きているこの現状が、他人と被っていないというか、他にないオリジナリティーになっていて。やりたいことをできて、ブレていないというところは、勝ち負けとか気にせず、今、僕が幸福に生きていられる要因の1つなのかなって思います。

――なるほど。

Mega:芸術の世界での勝負って、結局、プロモーションとか、その時代にたまたまそれをいいと言う人がいたとか、流行に乗るとか、そういう漠然としたものの結果で得られる数字でしか競争できないところだと思うので。だから“勝負”じゃないなっていう感じがしますね。自分のやりたいことをちゃんとやって、幅を増やし続けられればいい。これが一番大事だと思います。例えば、しこたま売れたからと行って、生活がめちゃくちゃよくなるかどうかはわからないし。だから着実に自分のやれること、やりたいこと、できることを、いい伝え方でアウトプットしていくというのが理想なんじゃないですかね。曲げたくない理想というか。

――その話につながるかも知れないですが、最初にYouTubeに曲をアップしたとき、Megaさんは「ここまで見られると思っていなかった」といろんな取材でお話しされてますけど、実際にはものすごく広がっていって、今年は3月と、その振替公演だった5月のワンマンライブ「Mega Shinnosuke SHIBUYA 3300」(@Shibuya WWW)を…。

Mega:そうですね。延期しました。

――延期となりましたけど、そこまで広がった。それにはやっぱり、レコード会社とか音楽評論家とか、直接的に力を持っていて評価してくれる人ではなくて、Megaさんの存在を求める多くの人にすごく刺さったというのがあると思うんです。で、Megaさんは、リスナーの存在をどういう風に捉えているのかなって伺ってみたいなと思いました。

Mega:そうですね…どうかな…。リスナーの存在って認識しようとしても、理解しようとしても、不可能なのかなと思っていて。“ファン”が1番わかりやすいですけど、SNSでリプライをくれるとか、YouTubeにコメントを書いてくれるファンは認識できるんです。でも見えないファンもいっぱいいるんですよね。SNSやってないけど曲を聞いてくれる人もいれば、Twitterで「いいね」を押すだけの人もいる。どんな人が聞いているか、全体像は一生わからないと思ってて。だから曲を書く時は、リスナーの存在を全く意識しない。何においても、自分の正しいと思うこと、やりたい、面白いと思うことを押し通すっていうことが1番大事なんじゃないかなって。曲を書くときにまでリスナーの存在を意識しだしたら、そのうち自分から動けなくなっちゃうような気がしてるし、僕がやりたいようにやっている姿を見てくれるという人が、結果的にファンになってくれるのかなって。最近は、いろんな反応が返ってくるので、応援してくれる人とかファンという存在がいてくれるんだ、ってグッと実感するようになりましたけど、把握できる範囲の誰かに向けての発信じゃなくて、あくまでも、全員に向けて、自分のいいと思うものを発信する、ということを考えています。

新曲「Sports」に込めたメッセージ

――5月8日に新曲「Sports」をデジタル配信でリリースしました。それで曲についてうかがう前にひとつ聞いてみたいことがあって。今の時期、スポーツってまさに1番難しいことじゃないですか。

Mega:そうですね。

――Megaさんはこのコロナ禍というか、今の環境をどう感じていますか?

Mega:別に、日本の未来とかそういう話をするわけじゃ全くないんですけど、僕は割と普通にアウトドア派なので、外、出たいな…、くらいです。でも、日本人全体に思うこととしては、待つしかないと考えている人がほとんどじゃないですか?恐らく99%くらいの人が、待つしかないと思ってるんじゃないかと僕は思っていて。問題はいろいろと起きているから、声を上げることや、現状を知ることももちろん必要な事なんですけど、だからってそればかりを追いかけても仕方がない気もして。 この状況は大変ではあるけれど、どうしようもないことでもあると思うんです。だからこそ、もう少しだけラフに考えた方がいいのかなって。僕も結構、いろいろと考えこんでしまうタイプの人間なので、自分に対しては「もうお手上げ!」くらいに言い聞かせて、そのくらいラフに考えるようにしています。

――「Sports」は何をきっかけにして作ったんでしょうか?

Mega:コロナで自粛ムードや規制といったことになる前に、ただ、公園の横を通り過ぎたんです。小さい子たちがめっちゃ遊んでいて、その時、最初に話した、校庭開放とかで運動して遊んでた頃のことを思い出したんです。5人くらいでサッカーを始めたのに、夕方の5時くらいには15人くらいになってる、ということがよくあったんですよね。なのに、最近のSNSはいろんな人と繋がれるからこそ、「この人とつながりたい」「この人とはつながりたくない」という風に、敷居とか区切りを強く作ってる感じがすごくあるなって。それって何か、どうなんだろうって…。音楽だったら、どんな人種も性別も、容姿も年齢も関係なく、好きな音楽が同じであれば、それについて話せたり、ライブ会場に行って誰とでも一緒に盛り上がれたりする。それはスポーツも、娯楽、芸術も同じだと思って。みんなで盛り上がる、そんな瞬間を思い出そう、ということを考えて作りました。誰とでも遊べたあの頃を思いだそう、って。そういう曲ですね。

――なるほど。

Mega:結果的にコロナの時期に出ましたけど、コロナに向けた曲でもないし、そんなキャンペーンソングは書かないです。普通のこの時代の人間みんなが持ってしまっている、選別してしまう心に対して向けた曲です。

何が作りたいかじゃなく、今、いい曲になっているかどうか

――発表する曲がどれも、いろんなジャンルを縦横無尽に越境していて、聞く度に発見があるし、次はどんな曲が来るんだろう、というワクワク感がすごいのですが、曲作りをしていく中で、その振り幅が広がっているという実感はありますか?

Mega:うーん…、広がっているというのもあるし、あとは、もともと振り幅が広いからできているのかなと思います。僕がいろんな音楽をやっているのは、もともと飽き性というのが大きくて、曲を出す毎に、いろんな音楽にハマっていくからなんです。特定のジャンルをやりたくて音楽を始めたわけでは全くないし、僕が影響を受けている海外のアーティストの方たちって、いろんな曲をやっている人が多いというのもある。僕自身、同じような曲が入ったアルバムは飽きてしまって最後まで聞けないので、じゃあ自分のアルバムもいろんな曲が入ってた方が楽しいじゃん、と。

――なかなかハマらないNetflixにもつながりますね。

Mega:そうですそうです(笑)。いろいろやってみるけど、飽きて辞めちゃうことが多いですね。いや、飽きると言うとネガティブに聞こえるかも知れないけど、ハマらなかったっていうことですね。でも“数撃ちゃ当たる”で、いろいろやればハマるものも増えていくはずなんです。だから他の人よりいろんなことをできている、という実感はあります。

――この先、どういうアーティストになりたい、といったイメージはありますか?

Mega:どうかなぁ…、イメージは全くないですけど。ストレスなく生きたいです。僕にとってミュージシャン活動は人生の大きな目標じゃないんです。やりたいことをして、「いい人生だったな」と思って死にたい、というのが大きいです。着たい服を着て、弾きたいギターで、弾きたいフレーズを弾いて、それが曲になって、リリースして聞いてもらえて。だけど、大きなところでライブをやりたいとなると有名にならなきゃいけない。そうやってつながっているだけで、「有名になった俺」に満足することも、そうなりたいという願望もないですね。

――ミュージシャンを目的にするのではなくて、自分のやりたいことに応えていく、みたいな感じでしょうか?

Mega:そうですね。だから現状はミュージシャンが面白いと思ってやっているので、どんなにお金を持っていても、もしも6億円もらっても、曲作りは止めないと思います。

――今後、書いてみようかなと思うジャンル・音楽性みたいなものはありますか?

Mega:僕、曲ごとにジャンルが違うってよく言われるんですけど、そこは僕が気にしているところじゃないんです。僕の曲がそう聞こえるのは、いろんな要素のマッチング次第なんですよね。ロックの要素、ダンスの要素、アコースティックな要素、というもののどれかが強く聞こえてくれば、特定のジャンルに聞こえる。でもそれは結局リスナーが選別しているだけで、僕の中では全然重要じゃないんです。さっきも言いましたけど、結果的に、いろんな要素が入ってる、という曲になるだけで、「こんなジャンルをやりたい」という気持ちはあんまりなくて。その曲ごとに、アレンジをしていく中で、変わっていくんです。新曲の「Sports」ももともとクリーントーンのギターサウンドで、さわやかな曲にするつもりだったけど、音がしっくりこないなあと思っていて、パソコンでギターのシミュレーターの歪みをバーンって上げてみたらめちゃくちゃカッコよくなった。じゃあパンクな雰囲気で行こう、みたいな。Bメロでさわやかなオートチューンエフェクトが入っているのも、歌のメロディーがさわやかなのも、それぞれで「いい」と思ったものが曲の中で噛み合ったというだけで、最終的にできる曲は、最初のイメージとは全然違うというのがほとんどなんです。

――なるほど。

Mega:1月に出した「Japan」も、もともとは冬の散歩の時に聞く曲、というテーマで作ったのに。

――全く違いますね(笑)。

Mega:はい(笑)。今聞いたら『ストレンジャー・シングス』の裏世界みたいな感じになってて(笑)。だから、こういう曲を作っていきたいと考えてもしょうがないなと思っているので、基本的にいつも何も決めてないです。

――ますます、この先の新曲も楽しみです。

Mega:僕自身も聞いてくれる方と同じ気持ちです。最初に僕の曲を聞けるのが僕というくらいで、全くの未知数です。

Mega Shinnosuke (メガシンノスケ)
2000年生まれの19歳。本名。 東京生まれ福岡育ち。2019年4月より東京在住。作詞、作曲、編曲を全て自身で行う。
2017年秋よりオリジナル楽曲の制作をスタート。00年代生まれならではのフットワークの軽さと、時勢をキャッチするポップへの嗅覚を武器に、 どこか懐かしさもある印象的なメロディーをロック、シティポップ、ガレージ、オルタナ、ヒップホップなど、 ジャンルを横断したサウンドに乗せる。
音楽以外にも、アートワーク、映像制作に携わるなど、全てをセルフプロデュースで行う新世代のクリエイター。

インタビュー・文:細川洋平
撮影:Mega Shinnosuke/和田裕也