かすみが、彼に「ええと。添島さん」と言った。すると彼は、「ああ、添島さん。かすみがお世話になっています。ええと、かすみの父です」と言った。
かすみが言う通り、平坦な道が続く。道は広くきれいで、でも古い感じで、昔からしっかりと、注意深く維持されていることがわかる。
「とにかく、今は、君の家に向かわなきゃ。あそこは今度にしようよ」かすみは、案の定また鼻で笑い、「意気地なし。どうせ行かないくせに」と言って、歩き出した。
しっかりした濃紺の箱に、えんじ色の大きなリボン。それが取っ手の付いた紙袋に入っている。傾けないように、と言われたので、ちゃんと水平を保ち、気をつけながら、JRの改札へと向かう。
マンゴー、キウイ、リンゴ、イチゴ、柿、たくさん並んでいる。柑橘類もいろいろ。オレンジとかみかん系。この、「手で剥ける」オレンジ、美味いんだよな。